リフォームや塗り替えで相続税対策をする場合の注意点
「相続前にリフォームすると、相続税を節税できる」と聞いたことがないでしょうか?
相続前に家のリフォームをしておけば、資産を減らせるので相続税の節税につながります。
相続を受けた人も、きれいになった家を引き継げますし、自分でリフォームする必要もないので効率的ですよね。
しかし2013年(平成25年)の税制改革により、リフォームによる相続税の節税効果は限定的になりました。
そのため節税対策としてリフォームするときには、どのような内容だと節税につながるのかを事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、リフォームや塗り替えによる節税についての概要と、相続税対策に有効なリフォームのポイントを解説します。
目次
1.リフォーム・塗り替えによる節税とは?
相続税対策の基本は、相続財産そのものを減らすことです。生前にリフォームや塗り替えを行うと、リフォームにかけた費用の分だけ財産が減るため、有効な相続税対策とされていました。
しかし2013年に税制改革が行われた結果、リフォームによる節税が難しくなっています。
まずは、税制改革によりどのような変化があったのかを確認しましょう。
税制改正前は効果抜群
税制改革前は、増築して床面積が大幅に増えるようなリフォームでなければ、建物の評価額が変わることはほとんどありませんでした。
家屋を相続する場合、相続税の課税価格は家屋に対する固定資産評価額に基づき計算します。
そのため、例えば生前に1,000万円費やしリフォームしておけば、相続財産を1,000万円減らし、結果的に相続税の節税効果がありました。
税制改正後ではなにが変わったの?
一方2013年の税制改革後は、リフォームした部分も相続財産として評価されることになりました。
具体的には、リフォームによる資産価値向上の事実が固定資産の評価に反映されていない場合、リフォームにかかった費用から償却費相当額を差し引いた価額の70%が相続資産として評価されることになったのです。
償却費を差し引けるものの、家屋は耐用年数が長いため、実際に差し引ける費用はわずかです。
そのため、リフォーム費用の70%が相続税の課税対象になると考えておかなければなりません。
つまり税制改革前は、1,000万円かけてリフォームすれば相続財産を1,000万円減らせましたが、改革後は300万円しか減らせなくなったのです。
※固定資産の評価に反映されていない場合とは
- 3年に1度行われる固定資産評価額の見直しまでに、大規模リフォームが行われた場合
- 建築確認が不要な小規模規模のリフォームで、固定資産の評価に影響がない場合
リフォームしたことを申告しなければ大丈夫?
「リフォームしたことを申告しなければよいのでは」と考える人もいるようですが、入出金の記録からリフォームした事実は簡単にわかるため隠せるものではありません。
税務調査が入り、あとになって指摘された場合は過少申告していたとみなされ、過少申告加算税が課税される恐れがありますので、申告は適正に行いましょう。
2.相続税対策に有効なリフォームのポイント
税制改革後はリフォームによる相続税の節税は難しくなりました。
とはいえ、すべてのリフォームが相続税の対象となるわけではありません。
ここでは相続税対策として有効なリフォームのポイントを紹介します。
床面積を変えない
最初のポイントは、「床面積を変えない」ことです。
床面積を増やすような大掛かりな増築工事は、役所に対して「建築確認申請」を行わなければなりません。
建築確認申請が出された場合、役所は工事が完了してから資産評価を行います。
家屋に対する相続税は、固定資産評価額をもとに算出するので、固定資産評価額が高くなれば当然相続税も高くなります。
つまり床面積を変えた場合、固定資産税と相続税のどちらも高くなってしまうのです。
節税を意識するのであれば、床面積を変えないことが基本です。
ただし、床面積を変えなくても建物の資産価値が高まるリフォームであれば、リフォーム費用が相続税の対象となる点には注意が必要です。
あくまで節税を目的とする場合は、新機能や付加価値をつけるようなリフォームは避け、後述するような定期工事や、原状回復工事にとどめましょう。
建物を維持するために不可欠となる定期工事費
リフォームが建物を維持するために必要なものであり、家屋としての資産価値を高めるものでない場合には、リフォーム費用を相続税の対象として加算する必要はありません。
具体的には外壁塗装や屋根塗装、シーリングの交換など、建物の劣化や雨漏りの発生を防ぎ資産価値を維持するために行う定期的な工事が該当します。
ほかにもシロアリ被害を防ぐためにかける費用も、相続税の対象とはなりません。
破損箇所の原状回復工事
現在破損している箇所を原状回復するリフォーム工事も、相続税の対象にはなりません。
例えば雨漏りを止めるために屋根や外壁のひび割れを修繕するのは、家本来の機能を回復させる工事にあたると考えられます。
雨漏りの状況によっては、屋根全体の葺き替えや、外壁の張り替えなどが必要になり、数百万円の出費になることもあるでしょう。
そのような場合でも、機能回復は資産価値を高める工事に該当しないため、財産として評価されることはありません。
たとえ500万円かかったとしても、相続財産扱いとはなりません。
経年劣化した付帯設備の交換
破損ではなく、経年劣化した設備を交換するリフォームは、相続税の対象となるかならないかは状況によって異なります。
例えば耐用年数を迎えた屋根の葺き替えに際し、既存のものと同じ屋根材を使った場合は、基本的に修繕として扱われるので相続税の対象とはなりません。
一方、今よりも耐久性の高い屋根材を使った場合には、資産価値が上がったと評価される可能性があります。
行う予定のリフォームが原状回復や修繕にあたるのか、それとも資産価値を高めるものなのかは、判断が難しいところです。
リフォーム会社の担当者に確認し、最終的には税務署に判断を仰ぎましょう。
3.まとめ
かつては手持ちの資産を減らし、相続税対策として効果的だったリフォームですが、法が改正されてからそのメリットは限定的になりました。
しかし相続税の対象となるのは、あくまでも建物の資産価値を高めるようなリフォームのみです。
屋根や外壁の塗装や修理など、建物の維持や原状回復を目的に行われるリフォームは、これまでと変わらず相続税の対象から外れます。
ただしその判断は簡単ではありませんので、まずは税務に詳しい信頼できるリフォーム会社に相談することが大切です。